2022年作品、洋画ホラー。A24製作。
映画『X』の前日譚。Xでヒロインとお婆さん(マキシーン)役を一人二役で演じたミア・ゴスの演技力。体当たりの演技としては前作『X』同様、性描写のシーンで今作『Pearl』も演じているが“X”の老女マキシーンのSEXシーンに比べると、若いままのソレは迫力は劣る気がする。
勿論、前作『X』と違いマキシーン=パールは若いので今回は若さ故に自慰行為が老女じゃない分、映えるので入れたんであろうが。その若いパール時代の頃から性欲が強いと言うのも描いていると思う。
ふんだんにそのシーンばかりではないが、性描写よりもホラー映画らしく暴力的なシーンが性欲の強さのソレを暴力と転換してる節のある描きかたでもあると思う。
つまり、ホラー映画によく欠かせないのが性描写と暴力は等しい描きかた。更にはよく美女がホラーに出るのも画面映えを狙っていると思う。大体のホラー映画の暴力描写は男が多いが、エクスタシーを感じての描きかたとしては女性が暴力をするのに変換してると、相応しくも映る。
ただ、世の中に男性が多いから男性の犯罪者が多そうに見えるだけで…。いや、女性は狡賢いから影でヤッてる事が多いのであろうか。表立たないだけで。
今回の映画『Pearl』の1番の魅力は、ミア・ゴスの演技力が試された事だと思う。前作『X』でも“若い女性”を演じてた。更に今回も若妻を演じているのだが、ミア・ゴス自身の実年齢29に見えない、若々しいと言うか“田舎の生娘にちゃんと、見える”。
演技とメイクが何と凄い事か?!いや、最初に彼女がUPで映し出された時に、目の下のクマの様なシワは気になったけど。
そして、映画終盤にはノーメイクであろう、顔の皺も露にしてるし眉毛も無い。それが返って苦労や葛藤の現れだとも見えた。 素肌が体当たりの演出とは褒め難いし、それ以上に彼女の演技力が、試されたのは“長回しの演技”。
舞台女優だって今時、1人の長回しのセリフ劇やるのかな?一人舞台でそう言う長いセリフがあったとしても、この映画の様に動かないで迫力もあり話す事が出来るかな?
また、1番のネタバレ的に最初と最期のタイトルがバーン!と現れる時が衝撃で近年で言うと、ホラー映画『RAW〜少女のめざめ〜』のパターンだなと思った。
も一つ重要なネタバレで言うと、長回しの顔芸の演技。最期のタイトル、バーン!の時に彼女パールがずっと笑顔。長回しの笑顔が続くがその笑顔の中にも苦悩や葛藤で最期は笑うのとは裏腹、涙を流します。笑顔のままですが。
その2点の、長回しの演技、恐らくワンカットで繋いでないのでは?よくあそこまで長回しに耐えられる。耐えうる精神力を持ってる。だからこそ、ホラーなのに高評価なのかもしれない。彼女の魅力も多々あるがこの映画がホラーの割には高評価なのを紐解いていこう。
まずは、A24のホームページを置いときます。(A24 外国版ホームページ、X Movie Instagram
日本のTwitter“映画Pearl公式”、日本の公式サイト 映画『Pearl Pearl』) 其れでは早速、あらすじと感想を書いていきます。
映画『Pearl パール』あらすじ
静寂の中、陽の光の移動と共に影は移り徐々に若い女の身体の形が現れていく。彼女は古い服を着てご機嫌である。
だが…母ルース(タンディ・ライト)が“私の服を着て良いと許可してないわ”“農場の仕事に戻りなさい”娘パール(ミア・ゴス)に言う。パールは服を脱ぎ農場の作業用ツナギを着る。文句を言いながら農場の動物小屋で牛さん達相手に自分の夢であるダンサーのセンター姿を見せようと稾の段を舞台に見立て乗る。農用フォークを手に…。
今にも踊り出して夢の国にいきそうなパールだったが、ガチョウがグワグワと近寄ってくる。パールは気を途切れさせられたわと思い、‘ガチョウさんどうしたの?’とガチョウ目掛けて農用フォーク(熊手)を振り下ろす…。
ガチョウは農場娘の力強いパールに見事に仕留められ、フォークに刺さったガチョウを運び家の近くの…裏手辺りだろうか池に行く。其処には名前も付けてるワニがいてパールは名前を呼び、フォークに刺さったガチョウを差し出す。
ワニが来てガチョウをパクつく…!(“Pearl”のタイトルがジャーン!と言う効果音で出る)
1918年テキサス州の田舎街。パールはドイツ語を未だに話す母ルースと、身体が悪く全身麻痺で会話もままならないモルヒネに頼って生きる車椅子生活の父(マシュー・サンダーランド)と暮らす。ドイツ人は移民で迫害されている…農場はあるものの、貧乏な生活を送っていた。
パールは農場から抜け出したく夫ハワード(アリステア・シーウェル)と結婚したが、夫は戦争に行ってしまい、此処で両親と共に仕方なく暮らしている。 ルースからは“私はずっと動きっぱなし”と手伝っている筈のパールを蔑ろにする言葉を吐き出される。
抑圧された生活の中でも、パールは若妻だが此処から飛び出したい一心で大好きな踊りで、ダンサーになりたいと夢を見る。父の“薬”を街に買いに行くついでに映画を見る楽しみがある。街まで自転車で楽しみに向かうパール。
父の“薬 ”はモルヒネ。その強力な鎮痛剤を僅かなお金で買いパールはそのまま薬のお釣りをくすね映画館へ向かう。 映画館では同時上映の映画が繰り返される様に上映されていた。 街では疫病が蔓延していて、マスクをしてまばらな映画館の椅子に座る。
大好きなダンスの映画“パレス・フォリーズ”が上映する時、見ながらコッソリ酒の様な物を飲んでいた。 映画を観た後に夢中になり映画館の裏にパンフレットを手に夢中に読み耽る。その後ろで映写機裏から映写技師が出てきたのも気付かずに…。パールは夢の中にいる様だった。
映写技師(デヴィッド・コレンスウェット)がパールに“面白かった?”と話しかけてくる。パールは、本当にこの映画が好きでと言う溢れんばかりの表情で答える。ダンサーの夢も話すが、家が大変だから家から簡単には出れない胸も話す。
技師は“君は凄い”と家族で苦労してるパールを労い、“君ならダンサーになれる”“この映画館の前の道路はヨーロッパに続いている”“今度、来た際は此処の扉を叩いて…好きな映画をかけてあげる”と話す。そして…フィルム映画の一コマをパールにあげる。
パールは浮かれながら自転車で街を後にする。その道端で風に吹かれ、胸ポケットに入れていたフィルムが飛ばされてしまう…。 とうもろこし畑程の背のある枯れ草を掻き分け掻き分け、フィルムを探すパール。だが、小さなフィルムは全く見つからない。
掻き分けた先にハシゴに括り付けられたカカシと会う。カカシは黒い長靴とシルクハット、カカシにしてはリアルな顔のカカシをハシゴを登って捕まえるパール。パールは“一緒に踊って頂けますか?”とダンスする。
カカシとのダンスで高揚したパール。カカシとの自慰行為に及ぶ。カカシは、先程の映写技師に見えてきた事に急にムカついて“私は人妻なのよ!”と。畑を後にし、家に戻ったパールはルースに疫病がうつらない様に身体を洗えと促す。
夕飯時は“お釣りはどうしたの?”“計算は出来るのよ”とルースから尋ねられる。パールは咄嗟に嘘をつく。‘飴を買った’と。するとルースは“飴を買ったなら夕飯は要らないね”と下げる。居た堪れないパールは席を立つ。だが、ルースは其れを許さない。
そんな抑圧された生活だが、たまに夫ハワードの家族が訪ねてくる。豚の丸焼きを持ってきたハワードの母。 その際にハワードの兄妹ミッチー(エマ・ジェンキス=プーロ)がパールに、今度の週末、ダンスのオーディションがあると話す。そして私達、同志だねと言い帰る。
パールは沸々とオーディションへの想いがあり、ワニの卵を見つけ納屋で羽化させようと藁に置くが…想いが沸騰してきて…夫のハワードが元気に帰ってくるのを妄想するがハワードは爆発…と妄想したと同時に卵を握りつぶす。
絶対にオーディションに出たいパールは、ルースが父の世話をしてる隙にパールはルースの服を着て準備に励む。 だが、食事中にパールの隠していた映画のパンフレットを食卓に出される。
親娘で言い合い合戦が起き、パールはどうしてもダンサーになると言い張りルースは私が夫を世話して嫌気が差してるのに!私をやっていけば良い!とナイフをテーブルに突き立てる。パールとルースは立ち上がり揉み合い状態になるが…ルースのスカートの下に暖炉の火がつき燃えていく。咄嗟に消すパール…焼けたままのルースを地下に起き、その勢いで家を飛び出して…。
パールのオーディションの行方は…そして歪んだパールの心はルースから解き放たれそのまま暴走するのか………?
映画『Pearl パール』(ネタバレ)感想
前作『X』の伏線を見事に回収してて良かった。『X』で農場の裏手のワニが沢山いる池で何故か古い車が沈んでいた。其れも気になってた処だが“X”で解決しなかったので何であの車は映ったんだろう?と。そうしたら見事に車は映写技師のものだと判明。
でも本当に凄いのはパールの性欲というより体力。流石農場の娘力強い。お母さんルースが全身火傷の後に地下室まで1人で運んだし、その後、映写技師を鍬で突き、突き…仕留めた。父親は綺麗にして…ここは倫理観なのか殺人シーンは映さずにいたが。
ここ迄3人、ヤッてるけど…更に義理の妹を最期はやるんだけどもね。1番凄いのはここ迄怒涛の展開…。母が焼け、技師とのSEX、そのまま早朝に家に送ってもらい昼からオーディション。オーディション前に技師を殺し綺麗にしようと身体を禊いでお父さんにも綺麗な服を着せて…。
父も殺しオーディションー。オーディションで落ちてギャン泣きした後に義理の妹と家に帰り、この事を含むハワードとの出会いから今までを告白。ミッチーはその長い告白に“誰にも言わないわ”と言われたがパールは家の玄関前の薪割りの斧を取り、ミッチーに振りかざす。
ミッチーを背中で3度も小突き…終盤、ミッチーをバラバラにするのは結構サクサク感があったけど血は出ないし。でも見事な殺しっぷりだった。 その殺し方にホラー好きの夫は高揚してた。またパールはワニの卵を握りつぶした時にパールのスイッチが入ったと考察してた。
確かに…そうなのか?冒頭より元からパールは学力もなく農場の仕事だけしてる体力だけはある(性欲も強い)生娘〈処女じゃなくウブな娘って意味〉だけど、ガチョウ等小さな動物を殺すたびに、罪悪感はあっても高揚してたと話していた。
最初から攻撃的な面があったと思う。 長回しのセリフには其処のところがありありと入っている。見た人はどんな感想だったでしょうか…?私は本当にXでの伏線回収が良かったし、口に指を当てシーっというシーンもXからだし、長回しの台詞も最後の長回しの笑顔も良かった。あとは、ワニを昔から飼ってたのはXでも合点がいった。
Xファクターと言うセリフをオーディションで言うのも、Xの伏線回収で笑った。エンドロールの後笑ってたのは私達夫婦だけだった…というかソロプレーヤーがホラーは多いからだろうけど。
それにしても本当にミア・ゴスは20代に見えた…。いや、実年齢もギリ20代だけど。思い切ったギャン泣きもだが田舎の生娘にしか見えなかった。
最期の…夫ハワードが帰るまでに食卓をミイラ化した両親で豪華な食事で囲んでいたが…ハワードの前に現れた時に持っていた水瓶には濁った水?苔の生えた様な水だと思うが…お金が無くなって。最期の晩餐だけ豪華にしたから飲む水も酷いものになったという表現かと思う。
そして晩餐の腐食具合で時間の経過も表してるのだろうが、私では詳しい時間の経過は想像出来なかった。仮にその水瓶の中身が水で、苔が生えるまでなんだろうかとは想像付く。
さて此処で、外国のサイトを参考に“Pearl”のトリビアを紐解きたい。
映画『Pearl パール』のトリビア
・クライマックスの長回しのセリフは7分57秒。
・パールの母親役ルースは1作目Xで映画にインティマシー(親密さ)コーディネーターとして関わりその後、今作でルースのオファーを受け急いでドイツ語を勉強。訛りのあるドイツ語で見事に使いこなした。
・今作はタイ・ウェスト監督とヒロイン ミア・ゴスの両名の脚本。Xの次回作として今作のPearlの脚本を共同で起こしたが映像化出来るか分からなかったそう。映像化出来なくてもパールの過去をハッキリさせる事でパールの輪郭を描けたと思ってたらしいが結果的にA24からOKを貰ったそう。
・XとPearlは同時進行の撮影だった
・タイ・ウェスト監督によると舞台になった家の持ち主は撮影で家を変えたが、気に入ったそうだ。多分、そのままの外観で残っているだろうと推測される。
・パールのワニは最初のサイレントポルノ女優の名前からとったシーダ。
・Pearlは当初、モノクロ撮影予定だったがA24に反対されカラーになった。
・エンドクレジットでパールが3分笑顔でいたのは監督の思いつき。ワンテイクで笑顔を撮って何が起こるかと撮影した結果。
・(外国の映画館では)Xの続編のティザーには、Pearl次回作の『Maxxxine』と言うタイトルが一部の映画館で表示されました。マキシーンは1980年代が舞台。
映画の年代と実際の年代の矛盾(Pearlの映画は1918年が舞台)
・パールに見せられたポルノ映画『フリーライド』は1915年の様だが、サイレント映画マニアは1920年代のモノと主張している。
・オーディションシーンでXファクター(未知)と言う言葉を使っているが一般的に使われた造語としては1930年
・パールが見ている映画『パレス・フォーリズム』には本編は音楽と音声が付いている。舞台が1918年だが、映画は8年早すぎる…つまり1926年が映画の公開した年。
さて、此れを踏まえて…矛盾点はあれど完全ファンタジーだから。面白さには変わりない。 ただ、ホラーだからわざとやってるのか?と言う様なカットの繋ぎミス?もあったそうで。例えばパールが映写技師と呑むシーンでは始め持ってたグラスの手が次のカットでは逆の手になってたり。
でも其れって奇怪な事ばかり起こるホラーだからこそなのかなって言う理解でも良い気がする。コレが現実だったら怖いし。 前作“X”の映画ブログで私は、この作品のモデルとなった事件、過去の実際にあった世界最高齢殺人に付いて調べ感想を書いたが、むしろ実際の事件には妻は関わっていないと言う。
ただ、“Pearl”や前作“X”の脚本は妻が全部殺人を犯している。 前作を忘れてる部分があったかと、脳内で再生…思い出してみても確かに夫ハワードは殺人に関わってない様だ。其れを気付かせてくれたのも私の夫だ。よく覚えてるなと思った。
実際の事件の主犯は妻ではないとずっと否定して(まだ確かご存命らしいが)るが、この映画の創作からみて‘いやいや、絶対、妻も関わってるでしょ?’と言ってる皮肉の様な作りが何とも憎い。次回作“Maxxxine”ではパールからマキシーンに名前が変わった処もやるのだろうか。
今回が若いパール。次回作が1980年と聞くので、其処から62年後。もう…1作目Xの手前の老女っぷりを、X以来また魅せてくれるんですね。 次回作もミア・ゴスも脚本絡んでるんだろうか?楽しみですね………。
感想が止まらない映画ですが、最期のミッチー(英語サイトそのままの翻訳だとミッツィー)の解体シーンがサクサクすぎて逆に怖かったですけど…何より合わせ鏡で撮る映像も久々に見ましたわ。大体、ミラーハウスでそう言う映像は前…近々だと“us”で見たかな。
最期のその合わせ鏡的な映像はどう言うつもりだったんだろう。コメディチックにしたかったのかな。日本でも合わせ鏡を覗くと霊が映る的に言うけどね〜。どうなんだろう、実際。
とりあえず、今作のPearlはホラー映画としては結構、面白かったですね!と言うか前作Xの伏線回収が本当に胸熱でしたわ。上手い事作ってるなって。 概ねアメリカでも好評らしいです。 有名な?トリビアでこの映画はコロナ禍で撮影時に農場で撮るのに国についたら隔離2週間して撮ったと言うのは、わざわざ書かなかったですが、コロナ禍で撮影でコレだけの質量の映画を作るとは凄いですね…!
★★★★
映画『Pearl』の評価
外国の評価サイトrottentomatoでも映画『Pearl』は高評価です。評論家支持率90%笑!平均評価は7.7/10。
Metacriticでは73/100、CinemaScoreは-Bを叩き出している。
映画『Pearl パール』DVD ヤマダ電機(←リンク2023.12)
コメント